恥部の思想

アイドルについての書かれない報告

悪玉

すごく今更のはなしだけれど、『ハンターハンター』のキメラアント編(以下、蟻編)が始まったとき、私は、とにかくワクワクしたのだった。


これまで緻密に組み上げてきた念の系統や、パワーバランスを崩壊させて、なんの前触れもなく突然出現した凶暴な敵。

グリードアイランドで鍛えあげた念能力を実践するためのバトル展開にしては、明らかに極端すぎる強さのインフレ。


邪悪な「王」の誕生を前にした時、私は、蟻編のテーマは、絶対的な悪を描くことなのだと思った。


旅団は当初は悪役だったけど、人間味がある、憎めない奴等に落ち着いてしまった。戸愚呂弟も、バカ王子も、結局はただのいい奴だった。口悪いけど実はいい人で売ってるオカマタレントやら、雨の中で捨て猫を可愛がるヤンキーやらと同類。こういうギャップを使った自己演出は、すげぇ〜かっこ悪いと、私は思う。


悪なら、最後まで悪を貫いて欲しい。


主人公を脅かすだけでなく、作品そのものの世界観に揺さぶりをかけて突如出現したキメラアントは、そんなチンケな悪と違う、本物の悪のはずだった。徹頭徹尾、滑稽なくらいの悪業の限りを尽くして、我々を震撼させ、作品世界にヒビを入れるはずだった。


しかし、長い長い休載と短期掲載とまたまた休載と駆け足展開を経て蟻編は、人間が一番悪い、という陳腐なオチにたどりついてしまった。究極の悪のはずの王は、無垢の魂をもった、善人さんになって、愛に目覚めた。


メデタシメデタシ


違う違う、俺が読みたかったのは、そんな教訓じみた”いい話”じゃない。

とにかく、

「マイクよこせ早く、キルアがNGLから逃げたとこから、俺に書き直しさせてくれ」、


というか、いつか書く。


ただ、そんな予定調和におさまった蟻編だけど、その後の選挙編や、暗黒大陸編の迷走っぷりをみると、キメラの牙が、少しは作品世界に混乱を残しているのだなと感じる。蟻編で、世界の底は抜けてしまって、もう戻れない場所にきてしまったのだな、と。


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