隠れ名盤 黒沢秀樹『Believe』
- アーティスト: 黒沢秀樹,長田進
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 1999/04/21
- メディア: CD
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黒沢秀樹が、L↔︎R活動休止後に出した、一枚目のソロアルバム。
ニールヤングやジョン・レノン風のサウンドにのせて、モヤモヤした心情を、死にかけの蝉みたいな力のない声でつぶやく、ただそれだけ、ホントそれだけのシンプルな作品なんだけど、大好きだ。
もちろん、モヤモヤした心情を歌う日本語の歌は、他にも色々とあるのだろけど、アルバム一枚通して、ここまでなにも断定できず、自身なさげで、優柔不断で、迷走しまくってる作品は珍しいと思う。
大抵の歌は、冴えない自分を歌いながら、何処かにある微かな光に向う姿(もしくはもがく姿)をえがくけど、この『believe』の主人公はなにもしない。物事に疑問を投げかけるけど、それ以上行動を起こさず、ボソボソとあーだこーだ、あーでもないこーでもない、そうかな?どうかな?、と呟くだけ。
そしてラスト曲では、衝突事故で死んだダイアナ妃にシンパシーをよせて終わる。スミスか、J・Gバラード(クラッシュ!)みたいだ。
「信じない、信じたい、まだ見たことのない、奇跡のように
信じない、信じたい、町中でさけぶ政治家のように、鏡の中を探すよ」
そんな情けない歌詞を、ニールヤングみたいな、ギンギンのギターが彩るから、とにかく哀しい。
ホント、このアルバムは、駄目なことしてるな、と思いながら風俗で散財し、時に妻の財布から小銭盗んでハイボール買って、一泊旅行に行くだけなのにカバン3つも準備してしまう自分にとって、red house paintersの音楽と並んで大事な生活のBGMになっている。
しかし、『believe』は黒沢秀樹にとって遅れてきたモラトリアムの一瞬の産物だったようで、今の彼の音楽には、もうこのモヤモヤ感が失せてしまっている。このスタイルを貫いて欲しかったのに残念である。